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2026年1月8日

コラム

就労継続支援B型事業所の開業|必要な資金・資格、開業の流れを解説

障害福祉サービスの一つである就労継続支援B型事業所は、社会貢献性が高く、安定した収益が見込める事業として注目されています。しかし、開業には障害者総合支援法に基づく厳格な基準を満たす必要があり、資金計画や人材確保についても考慮が必要です。


本記事では、開業に必要な資格、資金の目安、具体的な手続きの流れについて、公的な制度やデータを基に解説します。


就労継続支援B型事業所の開業に必要な資格と人員基準

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就労継続支援B型事業所を開設するためには、法人格の取得と、法律で定められた人員配置基準を満たす必要があります。具体的な資格や人員基準について解説します。


必要な資格と法人格

就労継続支援B型事業所を開設・運営するためには、「法人格の取得」と「専門職の配置」が法律で義務付けられています。個人事業主として開業することはできず、サービスの質を担保するために、実務経験豊富なスタッフを確保する必要があります。


法人格の取得

障害福祉サービス事業の指定申請を行う主体は、法人でなければなりません。主な法人形態と特徴は以下の通りです。


法人形態

特徴

開業時の傾向

株式会社・合同会社

設立手続きが簡便でスピードが速い。営利法人として柔軟な経営が可能。

新規参入の多くが選択。

一般社団法人・NPO法人

非営利性が高く、地域や行政からの信頼を得やすい。設立に時間がかかる場合がある。

地域密着型の事業所が選択。

社会福祉法人

公益性が極めて高いが、設立要件(資産要件など)が非常に厳格。

大規模な展開を行う場合など。


サービス管理責任者の配置

事業所のオーナー(開設者)に資格は不要ですが、利用者の支援計画(個別支援計画)を作成し、サービスの管理を行う「サービス管理責任者(サビカン)」を必ず1名以上配置しなければなりません。サービス管理責任者になるためには、以下の要件を満たす必要があります。


  • 実務経験

相談支援業務や直接支援業務(介護・福祉施設での業務など)において、保有資格に応じて3年から8年の実務経験が必要


  • 研修の修了

基礎研修: サービス管理責任者等基礎研修 + 相談支援従事者初任者研修(講義部分)

実務経験(OJT): 基礎研修修了後、原則として2年以上の実務経験(要件を満たせば6か月に短縮可能な特例あり)

実践研修: サービス管理責任者等実践研修


事業所の運営において、サービス管理責任者は欠かせない存在です。この資格要件を満たす人材の確保が、開業準備におけるハードルとなるケースが多く見られます。


参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について≪論点等≫」


人員基準

障害者総合支援法では、利用者に対して適切なサービスを提供するため、職種ごとの配置基準を定めています。利用定員が20名の場合を例に、主な配置基準を解説します。


職種

配置基準(定員20名の場合)

役割

管理者

1名(常勤)

事業所の業務全体を管理し、職員を統率する。他の職種との兼務が可能。

サービス管理責任者

1名以上(常勤・専従)

個別支援計画の作成、モニタリング、関係機関との調整を行う。利用者60名に対して1名の配置が必要。

職業指導員

配置基準に応じて変動

利用者の生産活動(作業)における技術指導やサポートを行う。

生活支援員

配置基準に応じて変動

利用者の健康管理や、日常生活上の相談・支援を行う。


職業指導員と生活支援員の配置を手厚くするほど、国から支払われる基本報酬が高くなります。


  • 10:1配置: 利用者10人に対し職員1人を配置。標準的な基準。

  • 7.5:1配置: 利用者7.5人に対し職員1人を配置。より手厚い支援体制となるため、報酬単価が高く設定されている。


事業の収益性を高めるためには、7.5:1の配置を目指すのが一般的ですが、その分人件費も増加するため、バランスの取れた経営計画が必要です。


参考:厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について≪論点等≫」


就労継続支援B型事業所の開業資金

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事業所の立ち上げには、物件取得費や改装費、設備購入費などの初期投資に加え、報酬が入金されるまでの期間を乗り切るための運転資金が必要です。


就労継続支援B型の開設費用の総額目安

就労継続支援B型事業所の開業資金の総額は、1,000万円から1,500万円程度が一般的な目安です。内訳としては、初期費用(イニシャルコスト)に500万円~800万円、当面の運転資金(ランニングコスト)に500万円~700万円程度を見込む必要があります。


自己所有の物件を使用する場合や、既存の福祉施設を居抜きで利用する場合は費用を圧縮できます。また、昨今注目される「廃校活用」も有効な選択肢です。広い作業スペースや駐車場の確保が容易で、地域住民になじみ深い学校という立地は、事業の信頼性向上や地域連携の面でも大きな強みとなります。


一方で、スケルトン物件からの工事や、大規模なバリアフリー化が必要な場合は、さらに費用がかさむ可能性があります。


初期費用・運転資金の内訳

開業資金は、設備を整える「初期費用」と、事業が軌道に乗るまでの「運転資金」に大別されます。


初期費用は500万円~800万円が目安です。法人設立費、物件取得費(敷金・礼金等)、内装工事費、車両・備品購入費などが含まれます。消防法やバリアフリー基準を満たすための内装工事費や、送迎用車両の購入費が大きなウェイトを占めます。


当面の運営費である運転資金は500万円~700万円が目安です。障害福祉サービスの報酬は、請求から入金まで約2か月のタイムラグがあります。そのため、入金が始まるまでの人件費、家賃、利用者への工賃支払い分として、最低でも3か月から6か月分の現金を確保しておくことが経営安定の条件です。


就労継続支援B型事業所の開業で活用できる補助金・助成金

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開業時の負担を軽減し、人材雇用を促進するために、国や自治体の補助金・助成金制度を活用することが推奨されます。制度の多くは返済不要ですが、支給要件が細かく定められています。


主な補助金・助成金制度

就労継続支援B型事業所が活用しやすい主な制度は以下の通りです。


制度名

概要・対象

特徴・活用のポイント

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

パート・アルバイト等の非正規雇用労働者を正社員(正規雇用)に転換した場合に支給される。

福祉業界の課題である職員の定着率向上と待遇改善に有効。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

高齢者、障害者、母子家庭の母などを、ハローワーク等の紹介により継続して雇用する場合に支給される。

採用の幅を広げつつ、開業当初の人件費負担を軽減できる。

人材開発支援助成金

職員に対して職務に関連した専門的な職業訓練(研修)を受けさせた場合に、経費や賃金の一部が助成される。

サービス管理責任者等の資格維持やスキルアップ研修に活用可能。

自治体独自の創業支援補助金

各自治体が独自に行う創業支援、空き家活用、バリアフリー改修などに対する補助金。

地域により内容が異なるため、商工会議所や自治体窓口での確認が必要。


人材確保や育成にかかるコストを軽減できるため、要件を確認の上、計画的に活用しましょう。


申請の注意点

助成金や補助金の多くは、実際に経費を支払った後に支給される「後払い」制であるため、開業時の初期費用そのものには充当できず、一時的な資金の立て替えが必要です。


また、採用や工事着工前に計画届を提出しなければならないなど要件が厳格で、書類に不備があると受給できません。申請にあたっては社会保険労務士などの専門家へ相談し、計画的に準備を進めることが重要です。


就労継続支援B型開設の流れ

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開業を決意してから実際にサービスを開始するまでには、約6か月から10か月程度の期間が必要です。


  1. 事業計画の策定・物件選定コンセプト(どのような作業を行うか)を決定し、要件を満たす物件を探します。


  1. 法人設立定款の事業目的に「障害福祉サービス事業」を明記し、法人を設立します。


  1. 事前協議(自治体への相談)指定権者(都道府県や市町村)の窓口で、図面や事業計画をもとに基準を満たしているか協議します。ここで消防署への相談指示なども受けます。


  1. 内装工事・備品購入・職員採用協議の内容に基づき工事を行い、必要な設備を整えます。並行してサービス管理責任者などの職員を採用します。


  1. 指定申請書類の提出事業開始予定月の前々月から前月にかけて、本申請を行います。


  1. 現地確認(実地指導)行政の担当者が現地を訪れ、設備や備品が図面通りか、鍵付き書庫があるかなどを確認します。


  1. 指定書の交付・事業開始問題がなければ指定書が交付され、翌月1日から事業開始となります。


  1. 利用者募集・契約相談支援事業所やハローワークへ営業を行い、利用者の受け入れを開始します。



就労継続支援B型事業所の開業に関するよくある質問(FAQ)

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開業を検討する際に、よく挙げられる疑問点について回答します。


就労継続支援事業A型事業との違いは?

就労継続支援A型とB型の違いは、利用者と事業所の間に「雇用契約が存在するかどうか」です。この違いにより、利用者に支払われる金銭の名称や適用される法律が異なります。


項目

就労継続支援A型

就労継続支援B型

雇用契約

あり(原則)

なし

対象者

一定の支援があれば雇用契約に基づく就労が可能な方

年齢や体力などの面で雇用契約を結んで働くことが困難な方

年齢制限

原則18歳以上65歳未満

年齢制限なし

給与・賃金

最低賃金法が適用される(給与として支払い)

最低賃金法は適用されない(工賃として支払い)


B型事業所は、重度の障害がある方や高齢の方など、より幅広い層を受け入れることができる点が特徴です。利用者は、自身の体調やペースに合わせて通所し、作業(生産活動)の対価として「工賃」を受け取ります。


参考:厚生労働省「障害福祉サービスについて」


経営がうまくいかない事業所の共通点は?つぶれる原因とは?

経営難に陥る主な原因は、利用者の獲得不足と生産活動の収益性の低さです。魅力的な作業内容やコンセプトがなければ利用者は集まらず、運営に必要な給付費を確保できません。


また、生産活動の利益が少ないと利用者に十分な工賃を還元できず、利用者の離反を招くという悪循環に陥ってしまいます。さらに、職員の定着率が低いこともサービスの質を低下させ、信頼を失う決定的な要因となります。


まとめ:就労継続支援B型事業所の開業で社会貢献とビジネスの両立を

就労継続支援B型事業所の開業は、障害のある方々の「働きたい」という思いに応える社会的意義の大きな事業といえます。成功させるためには、法令に基づいた適切な人員・設備の配置と、持続可能な収益モデルの構築が必要です。


開業資金としては1,000万円~1,500万円程度が目安となりますが、近年注目される「廃校活用」を選択肢に入れることで、広い作業スペースの確保や賃料コストの削減が可能です。また、学校という地域に馴染みのある場所を活用することは、住民との連携を深め、事業所の信頼性を高める上でも大きなアドバンテージとなります。


事業を軌道に乗せるためには、単に施設を作るだけでなく、独自のコンセプト作りや綿密な資金計画が不可欠です。まずは自治体の窓口や障害福祉専門のコンサルタント、社会保険労務士などに相談し、着実な準備を進めてください。

就労継続支援B型事業所の開業|必要な資金・資格から開業の流れを解説

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