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2025年11月12日

コラム

廃校の貸し出し情報まとめ!レンタル費用・探し方・活用事例を解説

少子高齢化に伴い、全国で増加傾向にある廃校では、「廃校の貸し出し」が注目を集めています。使われなくなった学び舎を、イベントスペース、ビジネス拠点、合宿施設など、さまざまな目的で活用されているのです。


しかし、「どうやって探せばいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。


この記事では、廃校の貸し出しに関する基本情報から、具体的な活用事例、主要地域でのエリア別の探し方、目的別のレンタル費用までを網羅的に解説します。


廃校の貸し出しとは?基本情報と活用事例

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近年、使われなくなった学校施設を地域活性化や新たな価値創造のために貸し出す動きが活発化しています。


ここでは、廃校の貸し出し制度の基本的な仕組みと、そのユニークな空間がどのように活用されているのか、具体的な事例を交えて紹介します。


廃校の貸し出しに関する基本情報


廃校の貸し出しとは、主に地方自治体が所有者となり、使われなくなった公立の小中学校などの施設を、民間企業や団体、個人に対して有償または無償で貸し出す制度です。文部科学省の調査によると、平成16年度から令和5年度までの間に発生した廃校施設は8,850校にのぼり、そのうち74.4%にあたる6,394校がなんらかの形で活用されています。


出典:文部科学省「令和6年度廃校施設活用状況実態調査の結果について(令和6年5月1日現在)」


貸し出しの背景には、自治体が施設の解体費用を削減しつつ、維持管理の負担を軽減したいという財政的な側面があります。それと同時に、外部のアイデアや資金を呼び込むことで、新たな雇用創出や交流人口の増加を図り、地域を活性化させるという重要な目的もあります。


貸し出しの形態は、数時間単位の短期レンタルから、月単位、年単位の長期的な賃貸借契約まで多様にあり、利用者は、自治体の公募に応募し、事業計画の審査を経て借り受けるのが一般的です。


廃校施設の主な活用事例


廃校施設は、教室や体育館、グラウンドといった多様な設備が整っているため、アイデア次第でさまざまな用途に生まれ変わります。主な活用事例は以下の通りです。


【イベント・撮影での活用】

学校特有のノスタルジックな雰囲気は、映画やドラマ、ミュージックビデオのロケ地として非常に人気があります。千葉県の旧長南町立東小学校や埼玉県の旧東小川小学校などが多くのテレビ番組などで学校スタジオとして使用されています。


【ビジネス拠点としての活用】

教室を改装して、企業のオフィスやクリエイターのアトリエとして活用する事例も広がっています。


たとえば、全国各地で展開する「おかえり集学校」は、ビジネスと地域貢献を両立させたユニークなモデルです。静岡県の旧土肥小学校を利用した「土肥集学校」や、岐阜県の旧菅田小学校を利用した「菅田集学校」などが挙げられます。


この取り組みでは、廃校を拠点に、高齢者向けのスマートフォン講習会や地域住民が集うコミュニティスペースの運営、パソコンの修理・販売などを行い、デジタルデバイドの解消と新たな雇用の創出につなげています。


【合宿・研修施設としての活用】

宿泊施設や食堂、浴室などを整備し、スポーツ団体の合宿や企業の研修施設として再生される例も少なくありません。兵庫県淡路市の「のじまスコーラ」は、旧野島小学校の跡地をリノベーションし、レストランやマルシェ、ベーカリーなどを併設した複合観光施設として運営されていますが、研修での利用も可能です。


グラウンドや体育館で練習に打ち込み、教室でミーティングを行うなど、学校ならではの設備を最大限に活かせます。


【エリア別】東京都・神奈川県・大阪府の廃校貸し出し事例

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廃校の活用方法は、その地域の特性やニーズによってさまざまです。ここでは、大都市圏である東京都、神奈川県、大阪府に焦点を当て、それぞれのエリアにおける廃校貸し出し物件の特徴と、物件の探し方のポイントを解説します。


東京都の廃校貸し出し物件の特徴と探し方


東京都内の廃校は、アクセスの利便性が高いことから、クリエイティブな活動や新たなビジネスを創出する拠点として活用される事例が目立ちます。かつて廃校活用の先駆けとして知られた「世田谷ものづくり学校(IID)」は、2022年に閉館し、2025年4月には、同地に「_HOME/WORK VILLAGE(ホームワークヴィレッジ)」という複合施設としてオープンしました。時代や地域のニーズに合わせて新たな役割を担っている特徴があります。


参考:世田谷区「産業活性化拠点『HOME/WORK VILLAGE』とは」


東京都内の物件を探す場合、各区の公式ウェブサイトで公募情報を確認するのが基本となります。産業振興課や企画課といった部署が担当していることが多く、「(区の名前) 廃校活用」や「旧○○小学校 活用事業者募集」などのキーワードで検索すると情報が見つかりやすいでしょう。


神奈川県の廃校貸し出し物件の特徴と探し方


神奈川県では、箱根や相模原など豊かな自然環境に恵まれたエリアの廃校が、体験型観光施設やアート拠点として活用される傾向にあります。都心からのアクセスも比較的良好なため、週末を利用したレジャーや研修の目的地として人気です。


具体的な例として、相模原市緑区の旧牧郷小学校は、NPO法人「牧郷ラボ」が運営する自然体験や地域活動の拠点となっています。 敷地内では田んぼや畑での農業体験、森の中でのイベントなどが開催されており、地域住民に愛されています。


神奈川県内の物件は、県の公式ウェブサイト内の「公有財産」に関するページや、各市町村のウェブサイトで公募情報が公開される場合があります。「神奈川県 廃校 公募」といったキーワードで探したり、観光振興に力を入れている地域の役場に問い合わせたりするのも有効な方法です。


大阪府の廃校貸し出し物件の特徴と探し方


大阪府では、都市部の特性を活かし、地域が抱える課題解決やコミュニティ創出の拠点として廃校が活用される事例が見られます。民間事業者の企画力を取り入れ、社会的な意義を持つ施設へと再生されているのが特徴です。


例として、大阪市生野区にある元御幸森中学校の校舎を再生した、通称「いくのパーク」があります。施設内には、誰でも立ち寄れるカフェや図書コーナー、多目的室、シェアキッチンなどが整備されており、国籍や文化の異なる人々が日常的に交流し、互いの文化を理解し合える場となることを目指しています。


大阪府内の物件を探す際は、大阪府や大阪市の公式ウェブサイトで、「大阪市 未利用施設 活用」などのキーワードで検索すると公募情報が見つかるでしょう。行政が民間から活用案を積極的に募集しているケースもあるため、企画提案型の公募に注目するのもおすすめです。


【目的別】廃校レンタル費用の具体例

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廃校をレンタルする際、最も気になるのが費用です。料金は、施設の立地、規模、利用目的、期間によって大きく変動します。目的別に費用の目安や注意すべき点について具体的に解説します。


イベントや撮影で利用する場合の費用目安


1日単位や時間単位での短期利用が中心となるイベントや撮影では、利用する施設(教室、体育館、グラウンドなど)ごとに料金が設定されているのが一般的です。


  • 教室

1時間あたり3,000円〜10,000円程度。都心に近い施設や、撮影機材のレンタルが可能な施設は高めの料金設定になる傾向。

  • 体育館

1時間あたり5,000円〜20,000円、1日貸し切りの場合は、50,000円から150,000円程度。

  • グラウンド

1時間あたり4,000円〜15,000円程度。夜間照明を使用する場合は追加料金が必要。


料金はあくまで目安であり、非営利目的の地域活動や学生の利用には割引が適用される場合もあります。利用を検討する際は、各施設のウェブサイトで料金表を確認するか、直接問い合わせましょう。


合宿や研修で数日間利用する場合の料金相場


スポーツ団体の合宿や企業の研修で数日間滞在する場合、1人あたりの料金が設定されているケースが多く見られます。料金相場は1人1泊2食付きで7,000円〜15,000円程度が目安で、この料金には、宿泊費、施設利用料(体育館、研修室など)、食事が含まれるのが一般的です。


最低利用人数が設定されている場合や、シーズンによって料金が変動することもあるため、事前に詳細な見積もりを取り、利用条件をしっかりと確認する必要があります。


オフィスやアトリエとして月単位で借りる場合の費用


教室の一つをオフィスやアトリエとして月単位で長期的に借りる場合、一般的な不動産物件と同様に賃貸借契約を結びます。賃料は、都市部と地方で大きく異なります。


賃料の目安は、地方では1教室(約60㎡)あたり月額30,000円〜100,000円程度、都市部近郊では1教室あたり月額100,000円〜300,000円程度が目安です。


これに加えて、契約時には保証金(賃料の数か月分)や礼金、共益費などが別途必要になる場合があります。


基本料金以外に注意すべき追加費用(光熱費・清掃費など)


提示されている基本料金だけで判断せず、追加で発生する可能性のある費用についても確認しておきましょう。


  • 光熱費

  • 清掃費

  • ゴミ処理費用

  • その他(インターネット回線の使用料、駐車場の利用料、プロジェクターや音響設備といった備品のレンタル料など)


契約前や予約時には、どこまでが基本料金に含まれ、何が追加費用となるのかをリストアップして明確にしておくことが、後のトラブルを避ける上で大切です。


廃校の貸し出しに関するよくある質問(FAQ)

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廃校の貸し出しを検討する際に、多くの方が抱く疑問について解説します。具体的な疑問を解消し、スムーズな利用計画に役立ててください。


体育館のみの貸し出しも可能?


多くの廃校活用施設や、地域住民向けに施設を開放している自治体では、体育館を単体で貸し出しています。バスケットボールやバレーボールなどのスポーツ活動、ダンスの練習、地域のイベントなど、さまざまな目的で利用可能です。


料金は時間単位で設定されていることが多く、自治体が運営する施設の場合は、比較的安価な料金で利用できる傾向にあります。探し方としては、「(地域名) 廃校 体育館 貸し出し」や「公共施設予約システム」といったキーワードで検索すると、対象の施設や予約方法を見つけられるでしょう。


短期間や1日だけのレンタルは可能?費用は?


廃校の貸し出しは、1日単位や時間単位での短期レンタルが可能です。イベント、撮影、ワークショップ、同窓会など、単発での利用ニーズに柔軟に対応している施設が数多く存在します。


費用は、施設の規模や立地、利用目的や利用時間によって変動します。具体的な料金を知るためには、利用したい施設のウェブサイトを確認するか、管理者に直接問い合わせて見積もりを依頼するとよいでしょう。


廃校の貸し出しと購入(売り物件)の違いは?


廃校の「貸し出し」と「購入」は、利用の目的、期間、予算、事業計画の規模によって選択肢が異なります。両者の主な違いは以下の通りです。


項目

貸し出し(レンタル)

購入

所有権

自治体や所有者にある

購入者に移転する

主な目的

短期イベント、撮影、サテライトオフィス

長期的な事業拠点、宿泊施設、福祉施設

期間

時間単位〜数年単位

永続的

初期費用

比較的低い(保証金、礼金など)

高額(物件購入費、登記費用など)

改修の自由度

制限あり(所有者の許可が必要)

原則自由(建築基準法などの範囲内)

手続き

賃貸借契約

売買契約、所有権移転登記



短期的なイベントや、まずはお試しで事業を始めたい場合は「貸し出し」が適しています。一方で、地域に根差した大規模な事業を長期的に展開したいのであれば、施設の改修などを自由に行える「購入」が選択肢となるでしょう。


廃校は個人でも購入できる?


個人で廃校を購入することは可能です。多くの廃校物件は自治体によって公募にかけられ、購入希望者は事業計画書を提出し、審査を通過しなければなりません。その事業計画は、地域活性化や雇用創出にどう貢献するかといった公的な視点から評価されることが一般的です。


費用面でも大きな負担が伴います。物件価格そのものに加え、老朽化した校舎の耐震補強や大規模なリノベーションに数千万円から数億円規模の費用がかかるケースも珍しくありません。


これらの条件から、実際には法人格を持つ企業が購入する事例が多いのが現状ですが、明確な事業計画と十分な資金があれば、個人でも挑戦することはできます。


廃校の貸し出しについて理解し、特別な空間を利用しよう


少子化という社会的な背景から生まれた廃校は、使い方次第で、ビジネス、文化、地域交流の新たな拠点となりうる大きな可能性があります。イベントの会場として非日常的な空間を演出したり、静かな環境で研修や創作活動に集中したりと、その活用方法は無限大です。


廃校の貸し出しは、利用者にとってはユニークな価値を持つ空間を手軽に利用できるメリットがあり、地域にとっては新たな活気を生み出すきっかけとなります。目的やアイデアに合った廃校を探し、この特別な空間をぜひ活用してみてください。


廃校の貸し出し情報まとめ!レンタル費用・探し方・活用事例を解説

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