top of page

2025年11月21日

コラム

廃校リノベーションの費用相場は?補助金や成功事例、失敗しないコツ

少子化の影響で全国的に増加している廃校は、新たなビジネスや地域活性化の拠点として注目を集めています。しかし、廃校リノベーションを成功させるためには、費用の全体像を正確に把握し、現実的な事業計画を立てることが不可欠です。


この記事では、廃校リノベーションにかかる費用相場や内訳、活用できる補助金制度、そして事業を成功させるためのポイントを、具体的な事例を交えながら解説します。


廃校リノベーションにかかる費用相場と内訳

ree

廃校リノベーションにかかる費用は、建物の規模や老朽化の度合い、そしてどのような用途に活用するかによって大きく変動します。


ここでは、初期費用となるリノベーション費用の目安と、運営を開始してから必要になる維持費について詳しく見ていきましょう。


【活用用途別】廃校リノベーション費用の目安


廃校をどのような施設に改修するかによって、必要な工事の内容や規模が異なるため、費用も大きく変わります。


以下は、主な活用用途別の費用相場です。


活用用途

費用相場の目安

主な工事内容

宿泊施設(ホテル・ゲストハウス)

数千万円~数億円

客室への間取り変更、水回り(トイレ、シャワー、厨房)の新設・改修、消防設備の設置、空調設備の更新

飲食店(カフェ・レストラン)

1,000万円~5,000万円

厨房設備の導入、給排水・ガス工事、内装デザイン、保健所の基準を満たすための改修

オフィス(サテライトオフィス等)

500万円~3,000万円

通信環境(光回線など)の整備、OAフロア化、会議室の設置、個別空調の導入

体験・交流施設

数百万円~数億円

用途に応じた内装改修(例:工房、ギャラリー)、バリアフリー化、安全対策工事

福祉施設(高齢者施設・障がい者施設)

数千万円~数億円

バリアフリー化(スロープ、手すり設置)、専門設備(介護用リフトなど)の導入、居室の改修

工場・養殖施設

数百万円~数千万円

特殊な設備導入、インフラ(電気、水道)の増強


上記はあくまで一般的な目安です。建物の状態や立地条件、導入する設備のグレードによって費用は大きく変動します。


廃校リノベーション費用の内訳


リノベーションにかかる初期費用は、単なる工事費だけではありません。多岐にわたる項目を考慮して、綿密な資金計画を立てる必要があります。


  • 設計・デザイン費

リノベーション全体の設計図やデザインにかかる費用。


  • 解体・撤去費用

既存の間仕切り壁や不要な設備を撤去する費用。古い校舎ではアスベスト(石綿)が使用されている可能性があり、その除去には専門的な作業と高額な費用が必要になる場合がある。


  • 建築・内装工事費

建物の構造補強(耐震補強など)、間取りの変更、床・壁・天井の仕上げなど、建物の骨格と見た目を整える工事。


  • 設備工事費

電気、水道、ガス、空調、通信といったライフラインを整備するための費用。旧耐震基準の建物では、現代の基準に合わせた耐震補強工事が必須となるケースが多く、費用が高額になる傾向。


  • 外構工事費

グラウンドの整備、駐車場の設置、フェンスの修繕など、建物周辺の環境を整えるための費用。


  • 諸経費

建築確認申請などの許認可申請費用や、登記に関わる費用など。


運営開始後の維持費の内訳


初期のリノベーション費用だけでなく、運営を開始してからのランニングコストも考慮しなければなりません。廃校は規模が大きい施設が多いため、維持費も高額になる傾向があります。


  • 建物の修繕・メンテナンス費

定期的な外壁の塗装、屋根の防水工事、設備の修理など、建物の状態を良好に保つための費用。


  • 光熱費・水道費

広い校舎全体を管理するため、電気代や水道代は一般の建物より高くなる傾向。


  • 税金

土地や建物にかかる固定資産税や都市計画税など。ただし、事業内容によっては減免措置を受けられる場合がある。


  • 保険料

火災保険や地震保険など、万が一の事態に備えるための保険料。


  • 保守点検費用

消防法に基づく消防設備の点検や、浄化槽の保守点検など、法律で義務付けられているメンテナンス費用。


  • 人件費

施設の運営に必要なスタッフの人件費。


自治体によっては、廃校の維持管理に年間200万円程度の費用がかかっているケースもあり、事業者に貸与・譲渡することでこの負担を軽減できるというメリットがあります。


廃校リノベーションで利用できる補助金

ree

廃校リノベーションには多額の費用が必要ですが、国や自治体による補助金制度を活用することで、初期投資の負担を軽減できる可能性があります。


代表的な補助金制度


国が主体となって実施している、廃校活用に利用しやすい代表的な補助金・交付金には以下のようなものがあります。


制度の名称

概要

事業再構築補助金

新市場進出や事業転換など、思い切った事業再構築に挑戦する中小企業等を支援する補助金

地方創生推進交付金

地方公共団体が行う自主的・主体的な取り組みに対して交付される

過疎地域持続的発展支援交付金

過疎地域における持続可能な地域社会の形成を支援するための交付金


出典:経済産業省「事業再構築補助金」

   内閣府「地方創生2.0 地方創生推進交付金(まち・ひと・しごと創生交付金)」

   総務省「過疎地域持続的発展⽀援交付⾦ 令和7年度当初予算(案)概要資料」


これらの他にも、文部科学省や国土交通省、農林水産省などによる支援制度を利用できる場合があります。


自治体独自の補助金や支援制度の探し方


国だけでなく、多くの地方自治体も独自に廃校活用を支援する補助金制度を設けています。自治体独自の制度を見つけるには、まず廃校が所在する自治体の公式ウェブサイトを確認するのが基本です。「(自治体名) 廃校 補助金」などのキーワードで検索したり、産業振興や地域づくりに関連する部署のページを調べたりする方法があります。


また、自治体の担当窓口へ直接問い合わせるのも早いでしょう。商工観光課や企画課、教育委員会など、廃校活用を担当する部署に相談すれば、最新で正確な情報を得られます。


他にも、地域の商工会議所や中小企業支援センターといった経済団体や支援機関も、地域活性化を目的とした補助金制度に関する情報を持っていることが多く、事業計画の相談にも応じてくれる可能性があります。


補助金申請を成功させるためのポイントと注意点


補助金は申請すれば必ず受けられるものではありません。審査を通過するために、以下のポイントを押さえておきましょう。


  • 具体的で実現可能な事業計画を準備する

  • 自治体の審査基準と手続きを理解する

  • 地域のニーズを調査する

  • 地域住民との信頼関係を構築する


これらのポイントは、単に補助金の審査対策としてだけでなく、事業そのものを成功させるための土台となります。


自治体は、税金を財源とする補助金の交付先として、地域に根ざし、持続的に発展していく可能性のある事業を求めています。そのため、これらの要素を事業計画に丁寧に盛り込み、説得力のある申請を行うことが重要です。


廃校リノベーションの成功事例

ここでは、廃校リノベーションの具体的な成功事例として、千葉県長生郡長南町にある「長南ドライブイン」を紹介します。


「長南ドライブイン」は、旧長南小学校校舎をリノベーションした「長南集学校」内に2020年12月オープンしたカフェ&弁当店です。大手ヨガスタジオでフードプロデューサーを経験したオーナー・田中春佳さんが地元食材と無添加にこだわって仕上げるランチやお弁当が評判となり、撮影現場や各種イベント、ミーティングなど幅広いシーンで利用されています。


長南ドライブインの最大の魅力は、地元の新鮮な野菜や米を使った無添加弁当・ランチです。サーファーや観光客、地元住民にも人気で、「安心して食べられる健康志向のご飯」「イベント時でも大量注文に柔軟対応」といった声が多く聞かれます。


【基本情報】

  • 住所:千葉県長生郡長南町長南770-1 長南集学校1F

  • 電話:070-4023-1866

  • ランチ営業:11:00~15:00(ラストオーダー14:30、月曜定休)

  • インスタグラム:https://instagram.com/chonan.drivein


【利用者の口コミ】

SNS上の口コミでも、「味」「雰囲気」「対応」の3拍子揃った高評価が多数見られ、地元の新しい拠点として定着しています。特に「野菜が美味しい」「ボリューム満点」といった声や、ペット同伴可能なテラス席の存在が評価されていることがわかります。


長南ドライブインに行ってきたよ~


【 幕の内 】

野菜たっぷりでグルテンフリー🥗

健康が気になる方にもめちゃオススメ🌟


テラス席ならワンコも一緒に行けました🎵


#ダイナム

#グルメ

引用元:X


うまくたの里でご飯とパンのお供を購入。

最近のお気に入りです。


お昼は長南ドライブインでお弁当。

母校が生まれ変わったのは、嬉しいやら悲しいやら複雑ですな。


米粉チキン弁当はめちゃウマでした!

他も美味そうなので再訪アリです!


 #CB400SF

 #長南ドライブイン

 #バイク好きと繋がりたい

引用元:X


日替わり弁当「グリルチキン」

久しぶりに"長南集学校"内にある"長南ドライブイン"さんのお弁当。相変わらずボリューム満点で野菜が美味しい!お近くに来た際はぜひ!


#長南集学校 #長南ドライブイン

引用元:X


このように、長南ドライブインは、飲食、交流、雇用の創出といった複数の機能を融合させ、子どもから高齢者まで多様な人々が集まる地域のハブとして成功を収めています。


廃校リノベーションのデメリットや失敗例

ree

廃校活用には多くの可能性がある一方で、計画の甘さや見通しの誤りから失敗に至るケースも少なくありません。ここでは、起こりがちな失敗例とその背景にあるデメリットを解説します。


高額な改修・維持費がかかる


老朽化した校舎は、構造躯体の劣化が進んでいることが多く、高額の改修費用が必要になるケースがある点がデメリットです。耐震基準を満たしていない建物では、耐震補強工事だけで数千万円の費用が発生することもあります。


また、学校施設特有の大空間は、冷暖房効率が悪く、光熱費が一般的な建物の1.5倍から2倍程度かかることもあります。断熱改修を行わない場合、年間の光熱費だけで数百万円の支出となり、事業収支を圧迫する要因となるでしょう。


利用予測が困難で運営が難しい


廃校は郊外や山間部など、アクセスが不便な場所にあることが少なくありません。そのため、地域住民以外の利用者を呼び込むことが難しく、集客に苦戦するケースが見られます。


地域住民のニーズや人口動態を十分に調査せずに計画を進めた結果、利用者が見込み通りに集まらず、収益化に失敗する可能性があります。都市部の感覚で商業施設などを開業しても、地域の需要とマッチしなければ成功は難しいでしょう。


施設の用途・転用条件に制限がある場合もある


公共施設である学校の転用には、各種法令上の制約が存在します。都市計画法上の用途地域によっては、商業施設への転用が認められない場合があります。


また、国庫補助を受けて建設された校舎は、補助金適正化法により、一定期間は用途変更に制限がかかることがあります。文部科学省への財産処分手続きが必要となり、場合によっては補助金の返還を求められるケースもあるため、事前の確認が必須です。


出典:財務省「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」


廃校リノベーションの費用対効果を高めるには

ree

高額な費用や運営の難しさといったデメリットを乗り越え、廃校リノベーションを成功させるためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。費用対効果を高めるための4つのコツを紹介します。


現実的な事業計画と綿密な資金計画を立てる


廃校活用を思いつきで始めるのではなく、ビジネスとして成立させるための緻密な計画が不可欠です。市場調査を十分に行い、ターゲット顧客や収益モデルを明確にしましょう。


資金計画においては、初期の改修費用だけでなく、開業後の運転資金や数年先までの維持管理費、修繕費も見込んでおく必要があります。複数の改修業者から見積もりを取り、予備費を確保するなど、余裕を持った資金計画を立てることが失敗のリスクを減らします。


地域住民を巻き込み、ニーズを的確に捉える


廃校は、卒業生や地域住民にとって思い出の詰まったシンボル的な存在です。事業を成功させるためには、地域コミュニティとの連携が最も重要な要素の一つと言えます。


計画段階から住民説明会を開くなどして対話を重ね、地域のニーズを事業計画に反映させることが重要です。地域住民が求める機能を取り入れたり、地元の雇用を生み出したりすることで、地域から応援される事業となり、持続可能な運営につながります。


学校施設のメリットを最大限に活かす


体育館、グラウンド、プールなど、学校特有の設備を有効活用することで、差別化された事業展開が可能です。たとえば、体育館をスポーツ合宿施設として、グラウンドをキャンプ場として活用するなど、既存設備を活かした事業モデルを構築できます。


また、教室の区画をそのまま活かし、複数の小規模事業者が入居するシェアオフィスとして運営することで、改修費用を抑えながら安定的な賃料収入を得ることも可能です。


スモールスタートでリスクを管理する


最初から校舎全体を大規模に改修するには、莫大な費用とリスクが伴います。まずは一部の教室だけを改修してカフェやオフィスとしてオープンするなど、小規模に事業を開始する「スモールスタート」も有効な手段です。


スモールスタートで事業の採算性や地域の反応を見ながら、段階的に規模を拡大していくことで、初期投資を抑え、失敗のリスクを管理することができます。


廃校リノベーションは着実な費用計画を

廃校リノベーションは、地域資源を活用した魅力的な事業機会ですが、成功のためには綿密な計画と十分な資金準備が不可欠です。初期投資として数千万円以上の費用が必要となり、年間維持費も数百万円規模となることを認識しておく必要があります。


一方で、各種補助金制度を活用すれば、初期投資の半分以上を補助金でまかなえる可能性もあります。事業再構築補助金や地方創生推進交付金など、複数の制度を組み合わせることで、資金調達の選択肢は広がります。


廃校をリノベーションして活用させるためには、地域のニーズを的確に捉え、学校施設の特性を活かした独自性のある事業モデルを構築することです。段階的な投資計画を立て、地域住民との協働を重視しながら、着実に事業を成長させていくことが、持続可能な廃校活用につながります。


廃校リノベーションの費用相場は?補助金や成功事例、失敗しないコツ

© General Incorporated Association Okaeri Shugakko.

bottom of page