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2025年9月28日

コラム

廃校ビジネスで地域活性化!成功事例から学ぶ活用方法や費用を解説

少子化の影響で全国的に増加している廃校は、今や地域活性化の「資源」として注目されています。


この記事では、廃校を活用したビジネスモデルに関心を持つ方々へ向けて、具体的な成功事例や失敗から学ぶべき注意点を詳しく解説します。リノベーションにかかる費用相場や活用できる補助金制度、そして事業を成功に導くためのポイントも紹介。地方での新たなビジネス展開や、社会貢献につながる事業を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。


廃校を活用したビジネスとは


廃校活用ビジネスとは、使われなくなった学校施設をオフィス、宿泊施設、工場、体験施設などに改修し、新たな価値を生み出す事業のことです。校舎や体育館、グラウンドといった既存のインフラを有効活用できるため、ゼロから建物を建てる場合に比べて初期投資を抑えられる可能性があります。


文部科学省の「廃校施設活用状況実態調査」によると、2024年5月1日現在で施設が現存している廃校7,612校のうち、5,661校がなんらかの形で活用されています。これは全体の74.4%にのぼり、廃校活用が広く浸透してきていることを示しています。


出典:文部科学省「令和6年度廃校施設活用状況実態調査の結果について(令和6年5月1日現在)」


活用先は社会教育施設や体育施設といった公共利用だけでなく、近年では地方自治体と民間事業者が連携するケースも増加。教室や体育館、給食室といった学校ならではの設備が、ユニークな事業アイデアの源泉となる点も大きな魅力です。


廃校活用の成功事例から学ぶビジネスモデル


廃校の活用方法は多岐にわたりますが、成功している事例には共通のパターンが見られます。ここでは、施設の特性を活かした具体的なビジネスモデルを、実際の成功事例とともに紹介します。


教育・研修施設としての活用事例

学校が本来持っていた「学びの場」としての機能を活かし、教育や研修の拠点として再生するモデルです。企業の研修施設や合宿所、プログラミング教室など、多様な展開が考えられます。


都道府県・市区町村

活用用途

特徴

山形県高畠町

大人の学び舎

旧時沢小学校を活用。教室等にネットワーク設備や空調を整えオフィスとして貸し出し。

大阪府堺市

大学

旧堺市立商業高等学校を活用。既存設備を利用。リカレント教育の推進にも寄与。

香川県三木町

希少糖研究研修センター

旧小蓑小・中学校を活用。廃校前の教室の特性を活かし、研修施設や宿泊施設として再生。



宿泊・観光施設としての活用事例

ノスタルジックな雰囲気を活かし、旅行者に特別な体験を提供する宿泊施設への転用も人気のビジネスモデルです。体験型ミュージアムや近年需要が高まっているグランピング施設などへの活用も考えられます。


都道府県・市区町村

活用用途

特徴

秋田県由利本荘市

木のおもちゃ館

旧鮎川小学校を活用。昭和20年代の数少ない木造校舎を活かしている。

岐阜県美濃市

和紙用具ミュージアム

旧片知小学校を活用。広い空間を活用し大型の用具類を展示。

静岡県島田市

グランピング施設

旧湯日小学校を活用。初期費用を抑え、東京や名古屋等からの利便性を活かしている。



文化・芸術施設としての活用事例

広い空間や防音性に優れた教室は、文化・芸術活動の拠点としても適しています。アトリエや工房、音楽スタジオ、劇場、美術館など、クリエイティブな発想を形にする場として活用できます。


都道府県・市区町村

活用用途

特徴

宮城県加美町

音楽技能修得施設

旧上多田川小学校を活用。自然豊かな環境を活かし感性を育む。

東京都北区

文化芸術活動拠点

旧豊島北中学校を活用。広いスペースだからこそできる多岐に渡

わたる文化の拠点として再生。

和歌山県海南市

スポーツセンター

旧第一中学校を活用。スポーツ少年団や学校の部活動などの合宿として利用できる。



農業・食品関連ビジネスとしての活用事例

校庭や周辺の土地を農地として利用したり、給食室を食品加工場として活用したりするモデルです。農産物の生産から加工、販売までを一貫して行う6次産業化の拠点としても注目されています。


都道府県・市区町村

活用用途

特徴

北海道小清水町

せんべい工場

旧北陽小学校を活用。屋根が高く大型機械を設置できる体育館を製造工場として利用。

茨城県行方市

体験型農業テーマパーク

旧大和第三小学校を活用。製造工場としてだけでなく農業体験もできる。

熊本県菊池市

酒蔵

旧水源小学校を活用。地域の米と水を原料とした酒造りを通じて地域振興にも寄与。


廃校ビジネスで失敗しやすいケースと注意点


廃校ビジネスには大きな可能性がある一方で、計画の甘さから事業が立ち行かなくなるケースも存在します。成功の確率を高めるために、失敗例から学べる教訓と事前に押さえておくべき注意点を解説します。


廃校ビジネスの失敗例

失敗に至る共通要因として、以下の点が挙げられます。


  • 集客計画の甘さ

施設の魅力だけで集客できると考え、具体的なマーケティング戦略を立てていなかったケース。都市部から離れた立地の場合、アクセス面の不利を補うだけの強力なコンテンツや情報発信が不可欠。

  • 収支計画の見込み違い

初期投資だけでなく、建物の維持管理費や光熱費といったランニングコストが想定以上にかさみ、資金繰りが悪化してしまうケース。古い建物は修繕費が膨らみやすい傾向にある。

  • 地域との連携不足

事業者の都合だけで計画を進め、地域住民の理解や協力を得られなかったケース。地域から孤立してしまい、運営に必要なサポートが得られなかったり、反対運動に発展したりすることもある。


失敗事例に共通するのは、事前調査の不足と楽観的な見通しに基づいた事業計画といえます。廃校ビジネスを成功させるには、綿密な準備と現実的な戦略立案が必要です。


廃校ビジネスでの注意点

失敗のリスクを減らし、事業を軌道に乗せるためには、以下の3つのポイントが重要です。


地域住民と協働しニーズを把握する

地域社会との良好な関係を構築し、住民と協働してニーズを把握することが重要です。事業計画の段階から住民説明会などを開催し、地域が抱える課題や施設に何を求めているのかといったニーズを丁寧にヒアリングしましょう。


地域の雇用を創出したり、地元で生産された産品を積極的に活用したりするなど、事業を通じてコミュニティに貢献する姿勢を明確に示すことで、地域からの応援を得やすくなります。


現実的な事業計画を立てる

ターゲット顧客を明確にし、商圏調査や市場分析を徹底的に行いましょう。そのデータに基づいて、客観的で実現可能な収支計画を策定することが不可欠です。


都市部から自動車で90分以上かかるような中山間地域では、集客のハードルが高くなるため、より慎重な事業計画が求められます。施設の維持管理費や将来的な修繕費用など、ランニングコストも詳細に算出し、余裕を持った資金計画を立ててください。


小規模・段階的な改修を行う

初期投資を抑えるためにも、既存の設備を最大限に活用し、必要最小限の改修からスタートする「スモールスタート」を心がけましょう。最初から大規模な投資を行うと、事業がうまくいかなかった際のリスクが非常に大きくなります。


事業の成長に合わせて柔軟に投資を判断することで、失敗のリスクをコントロールしやすくなります。


廃校ビジネスにかかる費用と補助金

廃校ビジネスを始めるにあたっては、費用面も気になる点でしょう。ここでは、リノベーション費用の相場から運営コスト、そして負担を軽減するための補助金制度について解説します。


廃校をリノベーションする費用の相場と内訳

リノベーション費用は、建物の規模や状態、そしてどのような用途に転用するかにより大きく変動する可能性があります。あくまで一般的な目安ですが、用途別の費用相場は以下の通りです。


活用用途

費用相場の目安(1㎡あたり)

主な内訳

宿泊施設(ゲストハウス等)

10万円~25万円

内装工事、水回り(風呂・トイレ)増設、空調設備、消防設備

飲食店・カフェ

15万円~30万円

厨房設備、給排水設備、内装工事、保健所の基準を満たす改修

オフィス

5万円~15万円

内装工事、電気・通信設備、空調設備

工場・作業所

8万円~20万円

床の補強、大型機械の搬入経路確保、給排水・動力設備


上記に加え、アスベスト除去や耐震補強工事など別途追加費用がかかる場合もあります。


初期投資以外の運営コスト

事業を開始した後は、継続的に運営コストが発生します。事業計画には、以下の費用も盛り込んでください。


  • 年間維持管理費:建物の修繕費、設備のメンテナンス費用、清掃費など。

  • 光熱費:電気、ガス、水道料金など。

  • インフラ維持費:浄化槽のメンテナンス費用、水道ポンプの維持費など。

  • 各種保険料:火災保険、賠償責任保険など。

  • 許認可申請費用:旅館業や飲食業など、事業に必要な許認可の取得・更新費用。


運営コストを正確に把握し、収支計画に適切に反映させることが、廃校ビジネスの持続可能性を確保する上で重要です。


費用を抑えるポイントと活用できる補助金

初期投資や運営コストの負担を軽減するためには、工夫と情報収集が欠かせません。


まず、費用を抑える基本は、既存の施設を最大限に活用し、大規模な改修を避けることです。たとえば、教室の黒板や机、椅子をそのままインテリアとして活かすことで、解体費用や内装費用を節約できます。


さらに、国や地方自治体が提供する補助金・助成金制度を積極的に活用しましょう。代表的な制度には以下のようなものがあります。


名称

概要

対象事業例

新しい地方経済・生活環境創生交付金

地方公共団体による地域の魅力向上・雇用創出等を支援する国の制度

廃校活用、移住定住促進、観光振興など

事業再構築補助金

新市場進出や事業転換など、中小企業の大胆な再構築チャレンジを支援する補助金

新分野への進出、業種転換など

過疎地域持続的発展支援交付金

過疎地域での産業振興・移住定住促進など、持続的地域発展を目的とした事業に交付される制度

産業振興、移住定住、廃校施設の改修など

出典:内閣府「新しい地方経済・生活環境創生交付金について」

   経済産業省「事業再構築補助金」

   総務省「令和7年度過疎地域持続的発展支援交付金の募集について」


これらの補助金は公募期間が定められており、申請には事業計画書の提出が必要です。申請を検討する際は、自治体の担当窓口や商工会議所、中小企業診断士などの専門家に相談することをおすすめします。



廃校ビジネスの可能性と今後の展望


廃校活用ビジネスは、単に空き家を再利用するというだけでなく、地域に新たな雇用を生み出し、交流人口を増やし、コミュニティを活性化させる大きな可能性を秘めています。


廃校ビジネスを成功させるためには、地域社会との丁寧な対話を通じてニーズを汲み取り、データに基づいた現実的な事業計画を立て、スモールスタートで着実に事業を成長させていくことが必要です。また、初期投資の負担軽減のために、国や自治体の補助金制度を活用するのもよいでしょう。


廃校という「地域の宝」を活かした新しいビジネスに挑戦することは、社会課題の解決と事業の成功を両立させる、やりがいのある取り組みといえます。

廃校ビジネスで地域活性化!成功事例から学ぶ活用方法や費用を解説

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